漆と漆器について
漆の魅力と漆器の知識
漆器の魅力
漆器を制作しているからこそ多くの方に伝えたい魅力があります。例えば、
「口当たりが優しく手触りも柔らかい」
「熱いものをいれても器が熱くなりにくい」
「抗菌効果に優れている」
「耐水性があり、酸やアルカリに強い」
「季節を問わず温かみがある」
「保温効果があり暖かい料理が冷めにくい」
「天然素材なので人、環境に優しい」
「軽くて壊れにくい」
「塗り直しや修理もできるため長く愛用できる」
「色、艶が変化し、使い込む楽しみがある」など
実際に使ってみて体感してはいかがでしょうか。
漆器の扱いかた
漆器は扱い方が難しいイメージがありますが、慣れてしまえば簡単です。
使用後は柔らかいスポンジを使ってぬるま湯で洗ってください。ただし、油分を含む料理の時は中性洗剤を少しつけてください。
また、洗った後はすぐに柔らかい布で拭き取って食器棚にしまってください。
避けてほしいこと
- 電子レンジやオーブンでの使用
- 食器洗浄機の使用
- 紫外線のあたる場所での保管
- 水、お湯に浸けたままにする
- たわしなど硬いものでこすらない
- 陶器と一緒に積み重ねる
漆とは
「漆」はウルシノキに傷をつけると滲み出てくる樹液のことです。漆科の木はたくさんありますがウルシノキは東アジアにしか分布していません。
まずは「漆」という漢字に注目してみましょう。読むことはできても書く機会はなかなかありませんよね?
木なのにさんずい!?
さんずいの右側には「木」に「傷」をつけて「水」が出るといった意味を持っています。
なるほど、漢字からも漆の特徴が伝わってきます。
太古から塗料や接着剤として親しまれている漆は長い年月にわたって人の手をかけながら大切に育てられています。
掻き子と呼ばれる職人さんがウルシノキを栽培して漆を採取してくれています。
10年以上かけて育った木から採取できる漆はわずか200g未満。
すべてを出し尽くしたその木は枯れてしまいます。このサイクルを続けて来られたお陰で漆工芸の技術が今に伝わっているのです。
漆の種類について
漆の木の表面に傷をつけ、そこから出てくる乳白色の樹液を採取します。それをろ過し、木の皮などの取り除いたものを「生漆」と呼びます。
生漆は木地に何度も擦り込んで艶を出して仕上げる摺り漆や器の下地として使われます。
生漆に含まれる水分をかき混ぜることで成分を均一にしてさらに加熱して余分な水分を取り除くと透明度の高い飴色の漆「透漆または木地呂漆」に変化します。
この漆に鉄粉をまぜると酸化作用により漆が黒く変化して漆を代表する黒い漆「呂色漆」になります。
さらに、「透漆」に顔料を加えて朱をはじめ、様々な色の漆「色漆」をつくったりします。
使用する漆について
漆の木は、日本や中国、東南アジアなどで生育し、以前は日本各地で漆を生産したようですが、現在では日本で使われる漆の90%以上が中国から輸入されたものです。
日本産の漆は希少で価格も高いのですが、日本の気候に適しているのはもちろん、蒔絵の技術には欠かせない塗膜の堅さを兼ね備えています。
漆は天然のものなので採取した国や産地により、また採取した年代や時期によっても成分が異なります。
精製の仕方でも粘度や乾きの早さなどの性質が違ってくるため仕上げ方に合わせて漆を使い分けます。
蒔絵とはうるしで模様を描き、そこに金属粉を蒔き付けてて磨きあげる日本ならではの表現技法
漆の塗膜について
漆の塗膜は堅牢かつ柔軟性もあり、一般的な化学塗料よりも強靭と言っても良いでしょう。また、人や自然にも優しく万能な性質をもっています。
例えば酸、アルカリ、塩分、アルコールにも強い。また、耐水性、断熱性、防腐性なども高いことがあげられます。
唯一、紫外線に弱い一面はありますが、紫外線を浴びて徐々に自然に還っていくことを考えれば理にかなっているとも言えます。
漆は固まる!?
漆は「乾く」では無く「固まる、硬化する」と言います。成分の酵素(ラッカーゼ)が、水分の中の酸素を取り込んで反応し、ウルシオールが液体から固体になっていくことからです。
なぜ固まるか、それは成分の酵素(ラッカーゼ)が、空気中の水分を取り込んで反応し、ウルシオールが液体から固体になるからなのです。
漆を固めるには、温度が25~30℃、湿度が70~80%程度が最も良いとされます。
地域・季節で言うと、日本の梅雨時期が最も早く固まりやすいのです。
梅雨時期や夏場は気候的にも固まりやすくなりますが、それ以外の時期でも漆を乾かすために[漆風呂]または[むろ]と呼ばれる温湿度を保つ箱に入れて硬化させます。